教育

お母さんを応援することが自分を応援することだった。

 小2のM子ちゃんは、今小2-10のプリント(横式引き算の最後)をやっているのですが、小2-6のプリントあたりで、もって帰った宿題がなかなか家でやれない日が続いていました。「あの、M子ちゃんはどこへ行ったんでしょうねー」と、毎日のように続いていた頃の自分の姿を思い浮かべながらも、なかなかできない自分をもてあましているような感じでした。

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 そのM子ちゃんのお母さんが、先週教室に来たとき、「お父さんと二人で、私たちもプリント何か始めましょうかねぇーと話しているんです。」というので、「どの教科をやりたいですか?本当は算数がいいんですが!」と、聞くと「算数は、ちょっと。とりあえず、漢字をやってみます。」というので、早速教室で1枚やってもらい、宿題も持って帰ることになりました。

 その際、「M子ちゃん、お母さんがプリントができるように応援してあげてね。時間を決めて一緒にやったらいいかもしれないね!」と提案してみました。M子ちゃんは「うん」と言って、教室を後にしたのですが、その1週間後、記録表を見たら、ほとんど毎日やってありました。その上、なかなか合格しなかった、2-6のプリントが合格していました。そして引き続き2-7、2-8とあっという間に合格し、宿題で2-9、2-10を5枚ずつ持って帰りました。

 そして、昨日お母さんから昼間に電話があり、「じつは、M子が、一枚目で2-9を合格してしまい、このままだと2-10も合格して、プリントが足りなくなりそうだから次のプリントをもらいに行きたいというのです。明日教室はやっていますか?」

 私は、「合格しても、同じプリントをやることは決して無駄になりませんから、そうしてみませんか?」と言うと、「私も、そう言ったのですが、次に進みたいからと言うんです。」
 こんなM子ちゃんの様子は初めてです。そこで、「分かりました。明後日なら教室が空いていますから、6時以降なら居ますので、来てください。」と言って電話を切りました。

 今まで、いろいろなやり方を提案し、なかなかできるようにならなかったM子ちゃんですが、ひょんなことから、リセットして始めることができるようになりました。
 親と子の関係の中で、子どもが親を応援することで、自分の課題も一緒に乗り越えていくことがあるのだということを改めて感じました。

 次の週、教室に来たM子ちゃんに、「最近毎日続いているのはどうして?」と聞いてみました。すると、「おかあさんがやろうと言ったとき、すぐにやるようになったから!」
「そうか、前に、お母さんに声かけしてもらうことにしたことがあったけど、そのときは、声かけしてもらっても、後回しにしてやらないことがけっこうあったけど、今回はお母さんがやるときに一緒にやっているんだ?」

 お母さんに記録表を確認することをお願いしたN君が、毎日プリントができるようになったことにしても、このM子ちゃんにしても、ここ最近、積極的なお母さんとの関わり方を提案することで、子どもが自分の壁を乗り越えていくのを目の当たりにする機会が続きましたが、このあたりに、もしかしたら、らくだの指導のポイントが一つ隠されているような気がします。

 親にしても、私たち指導者にしても、ただ、やるように言葉だけで働きかけるだけではなく、子どもがそうしたくてもできないのだということを認めたうえで、どうしたらできるようになるか、具体的な方法を一緒に考えて支援していくことがものすごく大事なことであり、特に、互いの合意の上で具体的な方法を試すこと、ダメならまた次の具体的な方法を試すというふうに、諦めず、根気よく続けることしかないのでしょう。

 特に今回は、子どもは親の具体的な支援を心のどこかで望んでいるのだということを、つくづく感じました。

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声かけをしてもいいのでしょうか?

時々、私の教室に来る生徒のお母さんから、「学校の宿題などの声かけをしてもいいのでしょうか?」と聞かれることがあります。
 私の教室では、子どもたちと相談して宿題を決めるのですが、そのプリントを家でやるときに、「プリントやりなさい」とか、「宿題のプリントやったの?」と、声をかけないで下さいとお願いしているので、学校の宿題ではどうなのかと考えてのことかもしれません。この質問にどう答えるかのヒントになりそうな出来事が最近あったので、そのことに触れてみたいと思います。

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 小四のN君は、一年ほど前に入会し、今、小4-10のプリント(二桁のわり算)をやっているところですが、部活が忙しかったり、コンピューターゲームで時間を取られたりで、なかなからくだのプリントを毎日できる状態ではありませんでした。これまでにもいろいろな提案をしたのですがなかなかプリントができるようにならず、お母さんにも、N君と相談して声をかけてもらうように頼んだりしていたのですが、それも効果はありませんでした。

 ところが、昨年の12月に入って、Nくんと野球の話をしながら、こんな提案をしてみました。「学校の宿題の前に、らくだのプリントをすることになっていたけど、なかなか難しいね。でも、お母さんに声をかけてもらってもなかなかできるようにならないから、明日から、プリントをやったらお母さんに記録表を見せて、確認してもらおうか?イチローの連続ヒット記録のように、毎日一枚に挑戦して、お母さんに見てもらうというのはどう?N君の好きな日本ハムもがんばって優勝したことだし、N君もそろそろがんばってみたら?」

 次の週、教室に来たN君の記録表を見て驚きました。毎日きちんとやっているのです。「えぇ、すごいじゃん!」思わず叫んでしまいました。それからクリスマスを迎え、正月を迎え、父親の実家に里帰りしたときも、帰ってきてもずっと毎日やる日が続いていて、一月以上が経ちましたが、まだその状態が続いています。

 お母さんに「最近、ずっと毎日一枚が続いていますがどうですか?」と聞いてみたら、「夕食の前などは、今まで時間があるとゲームをやってずるずると学校の宿題や、らくだを後回しにしていましたが、最近、少し時間があると、『今のうちにらくだやってしまおう』といって、さっと始めるんです。一年前と比べるとずいぶん変わってきたような感じがします。」そんな話をしてくれました。「まぁ、また壁が出て、できなくなるときが来ると思いますが、いつそれが来るか楽しみに待つことにしましょうか!」と私が言うと、「そうですね。」と余裕の表情で答えてくれました。

 N君にとっては、「お母さんに記録表を見てもらう」という行為は、チェックしてもらうという意味ではなく、自分のできないことができるようになるための応援という感じで受け止めているのではないでしょうか?

 こんな親子の関わりを眺めていると、最初に出た「声かけをしてもいいか、悪いか?」という相談は、「正解はどちらか?」という話ではないとつくづく思ってしまいます。「声かけをなぜするのか、どうするのか、しないとすれば、どうしてしないのか?」ということを、親と子どもが納得してルールとして作っているかどうかということが大事なのだということではないでしょうか?

 壁にぶつかって、嫌になりながらも、それを乗り越えようとしてなかなか上手くいかないで困っている子に、ただ「やったの、やりなさい」では、『お母さんはうるさい』ということしか伝わりません。

 子どもに向かって、指示、命令するのではなく、子どもが望んでいる方向を一緒に見据えて、「私はあなたの味方よ、何とか今の壁を乗り越える作戦を一緒に考えましょうか?」そんな親の気持ちが子どもに伝わるためには、「子どもが何を考え、どうしたいのか」を確認したうえで、具体的にどんな協力ができるかを提案し、子ども自身の了解を取ることがまず大事なのだと思います。そして、仮にそのやり方が上手くいかなくても、「この作戦はダメだったね。次の作戦考えようか?」と、あっけらかんと言えることも、子どもには大きな安心につながり、そのことが次に進むきっかけになるのだと思います。

 親の思いを伝えようとしたら、まず親自身が、本当に子どもに伝えたいことを自覚し、どうすればそれが伝えられるかを具体的に考えることです。そしてそれが上手くいかないときは、伝わらないのは相手の問題ではなく、自分の伝え方が問題なのだと思うぐらいでちょうどいいのです。まずは、親自身の考え方の整理と、子どもに対して了解と確認を取ること、それがポイントではないかと思います。

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子どもに聞いて「やらない」という返事が返ってくるのがはっきりしているとき

『長男は小3なんですが、脳性マヒで生まれて、車イスで生活しているため、地元の小学校ではなく、ちょっと離れたところの学校へ通っているんです。今度、妹が小学校に入るにあたって、「地元の小学校にするか、兄と同じ学校がいいか」と本人に選ばせたところ、最初は兄と同じ学校がいいと言っていたので、すべて手続きを終えたところ、幼稚園の卒業式が終わったあたりから、みんなと別れるのが悲しくなったようで、「みんなと同じ学校がいい」と言うようになったんです。兄と同じ学校にいけば、兄のことで起こる問題も引き受けるようになりますから、私は妹だけを兄の問題の外に置きたくないんです。本人の希望を無視することもよくないと思うし、どうしたらいいのでしょう?』

こう聞かれたセルフラーニング研究所所長の平井雷太さんは次のように答えました。

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●『おそらく、ここで起きてしまった問題は、本来はお母さんが決めるべきところをその判断を子どもに任せたところにあると思うのです。どっちの学校に行きたいかを子どもに聞けば、兄と同じ方に行きたいというに違いないと思っていた。そうすれば、お母さんが行かせたのではなく、本人が自分で選んだからになる。だから、娘さんがやっぱり地元の学校がいいと言ったとき、お母さんに動揺が起きた。子どもに聞く前から、お母さんの中にどうさせたいかがはっきりしているなら、子供に選ばせることはしないと思うんです。一見、聞いているように見えても、聞いているふりをしているだけで、本当はそうではないのです。』

●さらに『これは、らくだのプリントについても言えることです。絶対にやらせたいと思っているのだったら、「やるの?やらないの?」という問いは絶対に出してはダメなのです。「お母さんはやって欲しいけど、自分の問題だから、とりあえず、一週間やってみて、どうするか決めたら」。と提案するとか、言う時期を見計らうとか、聞いて「やらない」という返事が返ってくるのがはっきりしているとき、それを聞いたことで不満が残るなら、聞かない方がいいと思うのです』。

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☆私の教室に来ている子のお母さんが、同じようなことをするのに気がつくときがあります。例えば、今まで順調に学習が進んできていたのに、ある日突然壁にぶつかり、自分で選んだ宿題であるにもかかわらず毎日プリントをすることができなくなったとき、そんな子供の姿を見て「そんなにプリントやるのが嫌なら、やめちゃえば!」と言ったところ、その子は、本当に辞めてしまいました。お母さんがあせってもあとの祭りでした。

☆その子にとって、壁を乗り越える一番大切な時期に、学んでいく事をやめてしまう後押しをしているということになります。本当はそうしてもらいたくないことを脅しのつもりで使って、逆手にとられているだけではないでしょうか?

私は、本当にやめてほしいときでさえ「やめたら」と言うタイミングはとても難しいと思っています。子どもが、やめたくないと思っているのに、その一言で可能性の芽を摘むこともあると思うのです。

☆教室で、子どもたちと向き合っていると、「その子にとって今必要なことをどう伝えるか?」ということを、いつも考えていなければなりません。親としても、「自分の子どもにどんな力をつけたいのか?何を伝えたいのか?」をいつも問われているような気がしています。

生徒と先生、親と子という関係を少しはなれて、自分の気持ちが相手に伝わるということがどういうことなのかを考え続けたいと思っています。

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