声かけをしてもいいのでしょうか?
時々、私の教室に来る生徒のお母さんから、「学校の宿題などの声かけをしてもいいのでしょうか?」と聞かれることがあります。
私の教室では、子どもたちと相談して宿題を決めるのですが、そのプリントを家でやるときに、「プリントやりなさい」とか、「宿題のプリントやったの?」と、声をかけないで下さいとお願いしているので、学校の宿題ではどうなのかと考えてのことかもしれません。この質問にどう答えるかのヒントになりそうな出来事が最近あったので、そのことに触れてみたいと思います。
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小四のN君は、一年ほど前に入会し、今、小4-10のプリント(二桁のわり算)をやっているところですが、部活が忙しかったり、コンピューターゲームで時間を取られたりで、なかなからくだのプリントを毎日できる状態ではありませんでした。これまでにもいろいろな提案をしたのですがなかなかプリントができるようにならず、お母さんにも、N君と相談して声をかけてもらうように頼んだりしていたのですが、それも効果はありませんでした。
ところが、昨年の12月に入って、Nくんと野球の話をしながら、こんな提案をしてみました。「学校の宿題の前に、らくだのプリントをすることになっていたけど、なかなか難しいね。でも、お母さんに声をかけてもらってもなかなかできるようにならないから、明日から、プリントをやったらお母さんに記録表を見せて、確認してもらおうか?イチローの連続ヒット記録のように、毎日一枚に挑戦して、お母さんに見てもらうというのはどう?N君の好きな日本ハムもがんばって優勝したことだし、N君もそろそろがんばってみたら?」
次の週、教室に来たN君の記録表を見て驚きました。毎日きちんとやっているのです。「えぇ、すごいじゃん!」思わず叫んでしまいました。それからクリスマスを迎え、正月を迎え、父親の実家に里帰りしたときも、帰ってきてもずっと毎日やる日が続いていて、一月以上が経ちましたが、まだその状態が続いています。
お母さんに「最近、ずっと毎日一枚が続いていますがどうですか?」と聞いてみたら、「夕食の前などは、今まで時間があるとゲームをやってずるずると学校の宿題や、らくだを後回しにしていましたが、最近、少し時間があると、『今のうちにらくだやってしまおう』といって、さっと始めるんです。一年前と比べるとずいぶん変わってきたような感じがします。」そんな話をしてくれました。「まぁ、また壁が出て、できなくなるときが来ると思いますが、いつそれが来るか楽しみに待つことにしましょうか!」と私が言うと、「そうですね。」と余裕の表情で答えてくれました。
N君にとっては、「お母さんに記録表を見てもらう」という行為は、チェックしてもらうという意味ではなく、自分のできないことができるようになるための応援という感じで受け止めているのではないでしょうか?
こんな親子の関わりを眺めていると、最初に出た「声かけをしてもいいか、悪いか?」という相談は、「正解はどちらか?」という話ではないとつくづく思ってしまいます。「声かけをなぜするのか、どうするのか、しないとすれば、どうしてしないのか?」ということを、親と子どもが納得してルールとして作っているかどうかということが大事なのだということではないでしょうか?
壁にぶつかって、嫌になりながらも、それを乗り越えようとしてなかなか上手くいかないで困っている子に、ただ「やったの、やりなさい」では、『お母さんはうるさい』ということしか伝わりません。
子どもに向かって、指示、命令するのではなく、子どもが望んでいる方向を一緒に見据えて、「私はあなたの味方よ、何とか今の壁を乗り越える作戦を一緒に考えましょうか?」そんな親の気持ちが子どもに伝わるためには、「子どもが何を考え、どうしたいのか」を確認したうえで、具体的にどんな協力ができるかを提案し、子ども自身の了解を取ることがまず大事なのだと思います。そして、仮にそのやり方が上手くいかなくても、「この作戦はダメだったね。次の作戦考えようか?」と、あっけらかんと言えることも、子どもには大きな安心につながり、そのことが次に進むきっかけになるのだと思います。
親の思いを伝えようとしたら、まず親自身が、本当に子どもに伝えたいことを自覚し、どうすればそれが伝えられるかを具体的に考えることです。そしてそれが上手くいかないときは、伝わらないのは相手の問題ではなく、自分の伝え方が問題なのだと思うぐらいでちょうどいいのです。まずは、親自身の考え方の整理と、子どもに対して了解と確認を取ること、それがポイントではないかと思います。
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